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マーシュブローカージャパンの平賀暁代表取締役に財務上の影響から見たBCPの必要性について聞いた。
マーシュブローカージャパン株式会社 代表取締役平賀暁氏 財務上の影響から見た BCPの必要性 保険はパンデミックに対してどこまで有効か? 新型インフルエンザと保険を結びつけて考えて いる企業は少ない。実は、新型インフルエンザに 対応する企業保険がまったくないわけではない。 2002~2003年にかけ中国を中心に流行したSARS (重症急性呼吸器症候群)についても保険はあっ た。最近では、AIGのグループ会社が新型インフ ルエンザに対応した新たな商品を提供したことも ある。 もちろん、こうした企業では数値的な検証を十 分に行った上で、保険適用のトリガー(引金要件) や保証範囲を決めているわけだが、爆発的に売れ る商品には至っていないというのが実情のよう だ。また、保険料についても、火災保険などに比 べ割高になっていると言える。 ただし、業界的な立場からすると、発想は面白 い。さきほどの保険会社が着目したのは、新型イ ンフルエンザは実損がなくても経済的損失は発生 するということ。公的機関の発表や企業の休業な どの条件を保険適用のトリガーにすれば、保険は 成立するというわけだ。 例えば、WHOがフェーズについて何らかの宣 言をして、さらに新型インフルエンザの影響で社 内に感染者が出て会社が一定期間、休業したら保 険を適用するといった具合だ。 一般的に考えれば、パンデミックは広域で被害 を受けるため、ほとんどすべての会社が被災対象 となる。全員が被害を受けてしまったら被害率は 100%となるため「大数の法則」は機能しない。 32 リスク対策.com 2009/07 そこで、同社では事前のコンサルティングなども 併せてパンデミック保険を商品化していたよう だ。企業の関心が今後パンデミックへの拡大に連 れて高まる可能性は十分にあると考えられる。 ■国内では利益保険は適用されない 保険とパンデミックの関係を整理すると、まず、 国内では、財物保険については、あくまで物損を カバーすることが目的のため、新型インフルエン ザでの適用は難しいと判断される。 利益保険についても、基本的に国内では多くの 場合、財物保険に付帯されているので、この保険 での救済は難しい。ただし、約款によっては物損 が生じていないケースであっても監督官庁からの 承認により、保険対象施設への出入り禁止(施設 の閉鎖)等から生じる逸失利益をカバーする条件 が設定されていることもある。が、この場合も汚 染やカビ、病気などは免責となるケースがほとん どだ。 次に第三者賠償責任保険について考えると、約 款の内容により、病気感染に対する賠償責任があ ると判断された場合にカバーする可能性がある。 ただし、病気感染を拡大させないための措置を怠 ったという過失と病気感染の因果関係を証明する ことは難しい。 総合労災保険については政府労災保険の上乗せ として、カバーされる内容は基本的にそれに順ず るため、有効と考えられる。このほか、傷害保険 特集2 続・感染爆発との闘い 危機管理スペシャリストの緊急提言
2009/07 リスク対策.com 33 では新型インフルエンザは対象外であるが、医療 保険や海外旅行傷害保険、生命保険(死亡保険) はともに適用となる。また、入院などが長期にわ たった際の長期所得補償保険についても新型イン フルエンザは現状で対象となっている。 ただし、これらの保険についても、今後の被害 状況によって、例えば保険金の支払いが過度な経 済的被害をもたらすということになれば、政府当 局の指導などにより、免責になることも考えられ ないわけではない。重要な点は、企業の利益その ものを補填する保険というものは今のところ、国 内ではほとんど存在していないということだ。 一方、アジア全体として見ると、若干、事情が 異なる。例えば、利益保険の一部では、ヒトの感 染症や伝染病の発生の結果として、統 轄当局の承認により、保険対象の土地 建物の閉鎖や避難によって生じる損失 に対し、限定的な補償を提供する裏書 条項が含まれていることがある。これ までの経験上、関係当局による土地建 物の閉鎖や避難の要求はなかったが、 近隣で発生した疾病の影響により逸失 利益が発生するケースは多いようだ。 ■政府の支援は期待できない 次に政府の支援だが、現状では政府 が再保険などの資金調達に関わってい るものは原子力と地震の2つがある。 原子力については、事故があった時に 備えて、民間の保険会社が原子力プー ルというものを組織しているが、必要 に応じて政府が国会議決を経て支援す る体制が整えられている。地震保険に ついても政府が再保険と同じように資 金支援することになっている。 パンデミック対策については、中小 企業へのセーフティネットの対象とな る動きは増えてくるかもしれないが、 原子力や地震のように再保険的な資金 支援をする動きには今のところなりそ うもない。 以上の点から考えると、企業がただ ちに考慮すべき要点は、自社における財務上の影 響を見据えて感染予防や事業継続計画の策定・見 直しを進めることだ(図表参照)。 もう1点、事業継続計画については、特にグロ ーバル企業の場合、代替生産拠点などを考える際、 海外で新型インフルエンザに対して保険が適用さ れるかどうかという点も、1つの判断材料にする ことができる。もちろん保険ありきではないが、 代替の工場までもが仮に休業せざるを得なくなっ た場合に、保険が下りるのと下りないのでは大き く異なる。海外との連携も視野にパンデミックを 乗り切るというのも1つの重要なポイントと言え るだろう。 ■出張規程、衛生・医学検診規程、ならびに、殺菌剤やマスク、その他の物資の提供を含め、 抗ウイルス・ヘルスケア支援に関する規程を見直す。 ■職場内での感染リスクと病気の拡大を最小限に抑えるために、社会的隔離などの手段を確 認する。 ■パンデミックの脅威と企業の状況について在勤ならびに在宅従業員に対する継続的な情報 提供の方法を再検討する。 ■人口密集地では、可能であれば適宜、従業員が在宅勤務できるような計画にする。 ■パンデミックに直面した際に、ごく普通の市街地あるいは中心部での生活のために維持し なければならないプロセスがないか検討する。例えば、コールセンター、医療サービス、 弱者層にとって不可欠なサービスなどが挙げられる。 ■危機の効果的な管理のために必要となる体制を見直す。これには、複数の事業継続計画を どのように実施するか、在宅勤務となる従業員数の著しい増加や市場・サプライチェーン の大幅な変化にどう対処するかといったことが含まれる。 ■危機管理および事業継続管理計画にパンデミックを想定したシナリオが含まれていること を確認し、可能であれば計画の演習を実施する。 (事業継続の立案管理の重要なポイントは、感染リスクの軽減、事前措置による影響の最小 化、広範にわたる情報伝達、欠勤のピークの最小化、インフルエンザ再発の可能性に備える 計画の策定に置かれるほか、現地および世界市場の変化を反映するように事業活動とサプラ イチェーンを絶えず調整することに集中しなければならない) ■出張、従業員の配置、社会的隔離および医学検診に関する規程、広範な周知・情報伝達計 画およびプロセスに関する規程など、個々の状況に合わせたパンデミック対策を盛り込ん だ危機管理計画。 ■従業員の大部分がパンデミックの影響を受けているか、受ける可能性がある場合に備えた 交替要員または在宅勤務方針・計画。 ■従業員の健康状態を判定し、場合によっては、感染した従業員が出勤してきた場合に帰宅 させるための特別な予防措置の実施に関する戦略。 ■死亡などで故人の家族や会社の同僚に与える感情面の影響に対処するためのプロセス。 ■顧客需要、労働力、原材料の供給またはエネルギー資源の減少に基づいた、秩序ある操業 停止やサービス縮小のためのプロセス。 ■続行しなければならない中核業務に関する継続手続。 ■必需品、ビジネスサービス、製品の重要不可欠なフローを維持するための外部仕入先との 協力体制およびプロセス。 引用: Marsh Broker Japan, Inc., Client Alert 日本版 企業がただちに考慮すべき要点